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イベントレポート

大企業でアジャイル・スクラム・クラウドネイティブをどう実現しているのか。三菱重工のエンジニアが語る

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国をあげてDXが推進され、さまざまな業界でテクノロジーが活用され始めています。

各企業がDXに取り組む中で、2021年6月7日(月)に経済産業省から発表された「DX注目企業」として、重厚長大企業である三菱重工業株式会社が選出されました。

そこでFindyでは「日本のデジタル化最前線 Vol.4」と題し、三菱重工業株式会社のDXを推進する組織・DEDのゼネラルマネージャーである川口さんと、Findy経由で同社に入社された廣政さん、森岡さん、山田さんの計4名をお招きし、同社が取り組んでいる開発内製化、DXの実態、業務の面白さについてお伺いしました。

本稿ではパネルディスカッションの様子をお届けします!

目次

パネリスト

川口 賢太郎さん

三菱重工業株式会社 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 室長 大学・大学院で建築デザインを専攻、三菱重工業入社後は建築デザイナーとしてさいたまスーパーアリーナなどを担当。その後、MBAにてアントレプレナーシップファイナンスを専攻、製品開発・事業開発に担当業務を移行する。現在はジェネラルマネージャーとしてデジタルエクスペリエンスデザインに取り組んでいる。趣味は忌野清志郎。 参考記事


廣政 貴一さん

三菱重工業株式会社 共通基盤領域エンジニア 新卒でメーカーに入社し、エンジニアとして主にソフトウェア開発環境の構築・運用に従事。2020年11月に三菱重工入社。現在は共通基盤領域のエンジニアとしてインフラ構築等に従事。趣味はF1観戦。


森岡 周平さん

三菱重工業株式会社 サーバーサイドエンジニア いくつかのベンチャー企業を経て2020年7月 三菱重工入社。 現在はIoTシステムのテックリードを務める。


山田 悠太さん

三菱重工業株式会社 サーバーサイドエンジニア SIer、Web系のパッケージソフトの会社を経て、2020年8月に三菱重工に入社。 現在はCRMチームで、リードエンジニアとスクラムマスターを兼務し、とある事業部と共に社外へ公開するシステムを構築中。 最近、社外発表をしたりもしていた。

モデレーター

山田 裕一朗 同志社大学経済学部卒業後、三菱重工業、ボストン コンサルティング グループを経て2010年、創業期のレアジョブ入社。 レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携等を担当。 その後、ファインディ株式会社を創業。求人票の解析とアルゴリズムづくりが趣味。 参考記事

三菱重工のデジタル化を支援する組織「DED」とは

──まず初めに、川口さんより自己紹介と合わせてDEDが誕生した理由をお話いただけますか。

川口さん:川口と申します。三菱重工のDigital Experience Design・DEDというソフトウェアエンジニアリング部門で、ジェネラルマネージャーをしています。

まず初めに、三菱重工がどのような製品を作っているのかについてお話させてください。三菱重工は約4兆円の売上がある企業なのですが、単一の機械製品を製造販売してるのではなく、数十の機械製品事業で構成されています。全体の約4割が発電設備関連で、ガスタービンや原子力発電所といったもの。2割弱が航空防衛宇宙の製品で、5割弱が産業機械や社会基盤で、フォークリフトやゴミ焼却場といったものです。

三菱重工では各製品事業を15年ほど前から事業会社化を進め、事業運営の自律化を進め機動性を高めてまいりました。そして同時代に重要性を増した課題が「ビジネスの現場にデジタルを活用していく」ということです。サービスオートメーション、セールスオートメーション、マーケティングオートメーション、 IoT化、AI……、こういったことに取り組まないと、お客様に高品質なサービスが提供できなくなるだけでなく、従業員の生産性を高めることはできない。しかし、細分化された事業会社だけではデジタルを事業装備していくのは効率が悪い……。そこで設立されたのが、私たちが所属するDEDとなります。デジタル化の企画からシステムのDevOpsまで、事業会社のデジタル化をハンズオンで支援することを目的として、約3年前に誕生した組織です。

──三菱重工の未来を担っている組織だということですね。現在の取組や今後の展望についてもお聞かせいただけますか。 dx-org 川口さん:大きく分けて三本の柱でやっていて、1本目の柱は「EX」です。従業員が三菱重工で働きやすくなるよう、Employee eXperienceを上げるため、業務のデジタル化を図っています。他社様の例でいうと、日本マイクロソフトさんが、自社で販売されているOffice 365を活用して自社の生産性もどんどん上げていらっしゃる。それを私たちもやっていきたいと考えています。

2本目は「CX」。お客様が三菱重工と取引しやすくなるよう、Customer eXperienceを上げていこうという取組です。もともとはスポーツシューズの製造業だったNIKEさんが、近年ではお客さまとのタッチポイントをデジタル化していくことで取引しやすい環境を整備していらっしゃると思います。それを見習い、三菱重工をNIKEさんのようにしていきたいなというのが2本目の柱です。

3本目の「PX」は、当社の既存製品を次世代製品化していくというもの。例えばTeslaさんが自動車をコネクティッドカーとして新しいものに作り替えたように、私たちの既存製品を次世代製品化していきたいと考えています。

これら3本の柱のなかで、今まで取り組みが十分でなかった「CX」を中心に取り組んでいます。

dx-org2

具体的にどのようにやっているのかというと、「EX」については解決策であるSaaSがすでに世の中にあると考えています。したがってSaaSを活用してどんどんと課題解決していきます。

一方で「PX」については、課題解決できるSaaSがあるものではないので、自分たちで PaaS等を活用しながら独自のシステムを開発すし、自社製品の競争優位に繋げていこうとしています。

いずれにしても、EX、CX、PXを問わず、クラウドの恩恵を最大限活用しながらDevOpsをしています。また開発手法としてスクラムを採用し、アジャイルの恩恵を最大限活用しながら開発・運用をしています。Web系IT企業のプラクティスに学びながら、システムのDevOpsに取り組んでおります。

──なるほど。DEDのメンバーにはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。

川口さん:ビジネスサイド、テクノロジーサイド、両方のメンバーがいます。

キャプション文字
▲B=ビジネスサイド、T=テクノロジーサイド

ビジネス側の知見がないと課題を把握できないし、課題を解決する手段として技術力も必要不可欠です。そのため、ビジネス部門側からデジタル部門の方に異動していただき、一心同体で進められるような体制も構築しながら進めています。

メンバーは社内公募でジョインしたり、情報系子会社のエンジニアがジョインしたりするのに加え、キャリア採用でジョインしたメンバーたちが活躍してくれていることがとても大きいです。キャリア採用については、Web系IT企業やSIer出身のメンバーのほか、メーカー製造業でシステム開発をしてきたという人もいて、さまざまな経歴をもったメンバーが集まってくれています。

人数でいうと三菱重工グループ全体では8万人で、DEDは現在40人。人数は少ないのですが、成長率はこれまで年率100%で推移しています。例えば去年の今頃は20名で、その前は10名ほどしかいませんでした。これから組織の成長を促進していくことが課題です。

大企業でどのようにスクラム開発をしているのか

──ありがとうございます。それではここからパネルディスカッションに移ります。今回ご登壇いただく山田さん、森岡さん、廣政さんの3名は、Findy経由で三菱重工にジョインされました。自己紹介も含めて、現在担当されている業務や三菱重工で推進されているDXの詳細をお伺いしたいと思います。まずは山田さんからお話いただけますか。

山田さん:はい。初めまして、山田悠太と申します。よろしくお願いします。経歴としては、SIerで務めたあとWeb系のパッケージソフト会社を経て、2020年8月に三菱重工に入社しました。現在はソフトウェアエンジニア兼スクラムマスターとして働いていて、事業向けのECサイトを構築しており、最近はTypeScriptやReact、Next.jsを使って開発しています。

三菱重工のDXについて、私からは弊社で行っているスクラム開発の事例をご紹介したいと思います。

まず、以前の開発体制はプロジェクトマネージャーだけが社員で、開発は外部に委託するというスタイルでした。しかし、それではスピード感が遅かったり、コストがかかったりという問題があったため、私達のプロダクトではスクラムを導入しています。

キャプション文字
▲赤く囲ってあるのが社員メンバー

スプリントは一週間で回していて、スプリントプランニング→デイリースクラム→スプリントレビュー→振り返りという流れです。実際にやってみて、1週間でスクラムを回すのは難しいと感じるところもあります。また、体制的にステークホルダーがたくさんいて、かつ縦割りの組織のため、エンドユーザーが抱えている課題を把握しづらいという問題がありました。その問題を解決するため、スプリントレビューは事業部の方を巻き込んで一緒に行うようにしました。

sprintreview ▲実際のスプリントレビューの様子

実際にやってみた感想として、やはり事業部を巻き込んでいくことが大切だなと感じています。一般的に、事業部の意見を無視して開発を進めてしまった結果、全く見当違いな方向で開発が進んでしまうということもあるかと思います。私たちはそのような問題を防ぐために、企画部門やカスタマーサポート部門を巻き込んで開発を進めることで、課題の解像度を上げようとしています。

現状としては企画部門の方とともに進めるところまでできていて、今後はカスタマーサポートも巻き込んでいこうと考えているところです。アジャイルの取り組みについてはギルドワークスさんの事例紹介記事も見ていただけると嬉しいです。

▼事例紹介記事(ギルドワークス株式会社) チームで踏み出した、アジャイルのはじめの一歩(前編) チームで踏み出した、アジャイルのはじめの一歩(後編)

──ありがとうございます。一般的なIT企業で想像する事業部といえば、営業が真っ先に出てくると思うのですが、三菱重工の事業部にはどのような方がいらっしゃるのでしょうか?

山田さん:機械が故障した時に現地に訪問して修理する、カスタマーサポートエンジニアのような人をイメージしていただくと近いかもしれません。

──なるほど。これまで全く違う事業に取り組まれていると思うのですが、DEDで働かれる上で、山田さんが面白いと感じるポイントはどういったところなのでしょう?

山田さん:三菱重工で製造している機械製品はさまざまなものがあるので、それぞれ特有の業務知識に触れられるのは魅力です。お客様ごとにカスタマイズして導入しているので、そういったところも特殊なのかなと。三菱重工に入社するまで、産業機械について全く知らなかったのですが、普通の企業だと関わることのなかった世界を見ることができるのは面白いです。

ベンチャーから大企業に転職して働き方や技術で感じたギャップは?

──続いては森岡さんにお話をお伺いしていければと思います。

森岡さん:森岡周平と申します。よろしくお願いいたします。現在は三菱重工でIoTシステムの開発に携わっています。入社時期は2020年7月1日で、前職のベンチャー企業ではソーシャルゲームや車の配車アプリ開発に携わっていました。

私の方からは技術に関してお話しさせていただきます。

私が所属しているIoTデータ分析チームでは、三菱重工が製作している各種機械のデータを見える化し、重厚のアフターサービス業務の効率化や高付加価値化をサポートする業務を担当しています。

例えば機械が故障した際や調子の悪い時に、お客様から連絡がなくとも自分たちで検知してこちらからアプローチができるようにしたり、機械自体のデータを取ることによって、より良い改善案を提案できるようにしたりする。現状では、そのための可視化ツールを提供しています。

キャプション文字
▲実際のシステムアーキテクチャー図

現在はIoTデータ分析チームのシステムが2つほどあり、こちらはその内の一つです。Soracomを使って工場からデータを送っていただいて、その場ですぐ見るようなものはHarvestで確認し、Lagoonで可視化しています。

追加で分析が必要なものは、一度IoTで受け取った後にSQSにデータを送り、その後にLambdaで加工して見られる形にしてから、Auroraに投入しています。工場からくるデータはステートレスな物だけではなく、「過去のセンサーの値が〇〇で現状はXX、ということは意図した変化ではないから知らせなくてはいけない」などの状態があります。そういった時にIoT Eventsを使ってアラートあげるような機能を開発したりしています。

データの可視化については、ECS上でNext.jsを動かして、そちらで確認します。認証についてはAuth0を利用していて、自前での実装はあまりありません。ベンチャーで使っているような技術とさほど変わらないのではないかなと。

特徴としては、基地局からSoracomまでは専用線が引かれているため、パブリックのネットワークにほとんど出ることなくAWSでデータが受け取れるというところです。可視化するところまで一度も外に出ることなく、データを管理することができるような仕組みとなっています。

techstack 利用している技術スタックについては、上記の図の通りです。フロントエンドはTypeScript、Next.js を使っていて、 ORMとしてPrisma、テスティングフレームワークとしてJest、CI/CDにGitHub Actionsを利用しています。

インフラはTerraformを利用していて、CI/CDはTerraform Cloudを実行しています。

エッジはSoracomを利用していて、LambdaはNode.jsを使っています。テストはJestで、エッジ側のCI/CDのツールとしてはCDKを利用しています。テストはGitHub Actionsで、フロントエンドと同様にしているんですけれども、CDKは強い権限を持たせなければならないといったところがあって、 MFAで必ず認証したいので、手動で行っています ※ インタビュー後の2021年10月4日時点では GitHub Actionsから IAM Roleが利用できるようになったので、この運用は不要かも知れません

──ありがとうございます。技術に関しては森岡さんの入社後に選定されたものなんでしょうか?

森岡さん:両方あります。私が入社する前からTerraformでIaCは実現されていましたね。私が入社してから選定したのは、LambdaのデプロイにはCDKを使うということや、山田と話し合って決めたTypeScriptやReactといったところ。ちなみに、先ほど山田が話していたECサービスなどは、 Vercelを使ってホスティングしていたりします。そういった意味でもNext.jsなどは全体的に使われているのかなと。

──裁量を持ちながら技術選定されているのですね。森岡さんはベンチャーのご出身ですが、規模の違う大企業に転職する際に迷ったことや、実際に働いてみて感じたベンチャーと大企業の違いなどはあるのでしょうか?

森岡さん:私の場合は、会社の規模はあまり意識していなかったので、特段迷いはなかったです。それよりも組織の中でどういった働き方ができるのかや、会社が向かっている方向性を意識して転職活動していました。DEDは 進もうとしている方向性に強く共感できたので、 それが入社の決め手でした。入社前後のギャップなどもほとんどなかったです。

働き方についても、やっていることはベンチャーと変わらないなと感じています。使っている技術やプロジェクトの進め方についても、いい意味でベンチャーとほぼ変わらず仕事ができています。とはいえ、内製化を進めていく中で、経験が浅いプログラマーも一定数いるため、そういった方でもしっかり結果を出せる技術選定が重要だと考えています。全てをフルスクラッチで作るのが正解とは言い難く、検証する際はノーコードで作ることもあります。そういったところはこれまでと大きく違うところかもしれません。

ゼロトラストネットワークを実現。アジャイルでの開発環境構築

──最後に廣政さんより、自己紹介と三菱重工で取り組まれていることについての紹介をお願いいたします。

廣政さん:初めまして、三菱重工の廣政と申します。よろしくお願いいたします。山田さん、森岡さんより少し遅れてDEDにジョインしました。メーカー出身なので、お二人とは少しタイプが違うかもしれません。

三菱重工では共通基盤領域のエンジニアをしているので、本日は共通基盤領域がどんなことをしているのかお話ししたいと思います。

端的にいうと、共通基盤領域チームは、DEDで開発しているプロダクトたちに共通する悩みを解決する“縁の下の力持ち”です。 group スライドの図でいうと、「主にこの領域」と書いてある部分。ユーザー管理やシステム連携、サービスの利用状況に関したところなどを担当しています。それ以外の領域についても開発していて、例えばデータレイクなどは他のチームと一緒に取り組んでいます。他の分野であっても越境して取り組むというのが、私たちの組織の特徴だと考えています。

森岡さんの話と被るところもあるのですが、開発環境についても簡単に紹介いたします。

キャプション文字
▲実際に使用されている技術や開発ツール

川口さんより「従業員のEXを向上する目的がある」という話があったかと思うのですが、まさにそれを自分たちの組織でも実践していて、良いと思ったものは積極的に試しています。私が入社してからもどんどんアップデートされていますし、実際に使ってみて良かったものは社内に向けて積極的に発信しています。

自分で言うのも変なのかもしれませんが、良いものを使っていて充実していると思っています。特に開発に欠かせない端末については、各自が希望するものを選べるような環境です。

──1番最初にインタビューさせていただいた時にも同様の話をお伺いしたのですが、かなり設備投資されているのですね。開発環境の事例などがあれば、お教えいただければと思うのですが、いかがでしょう?

廣政さん:はい。ちょうどいい事例があるので、最後に一つご紹介します。 dev-env-agile 私たちは現在ゼロトラストネットワークモデルな開発環境を構築しています。なぜゼロトラストにチャレンジしたのかというと、理由は二つあります。一つ目はDEDのプロダクトはほとんどがクラウド上で開発されているため、セキュリティを維持しながらインターネットに直接アクセスした方が効率的だということ。二つ目は新型コロナウイルスの影響でほぼ在宅勤務となり、VPN渋滞のような事が起きてしまったためです。

上記を踏まえて、ゼロトラストネットワークモデルを採用することにしました。ユーザーやデバイスの認証だったり、端末管理だったり、考え方も非常に多岐に渡るのですが、そういったところを私たち自身も吸収してきました。山田さんの説明にもあったように、私たちもアジャイルの考え方を取り入れつつ、スコープを絞って仮説と検証を繰り返し、スピーディーに構築してきました。開発環境の面でも新しいことに積極的にチャレンジできるというのが、DEDの文化なのだと感じております。

──大企業ながら新しいことにも積極的にチャレンジできるというのは大きなポイントですね。ありがとうございました!

後編ではイベント中に届いた質問と、それに対する回答をまとめてご紹介します!

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